バブルの頃に計画された幻の福井市新栄商店街再開発計画

2021年4月27日、福井市都心にある新栄商店街の有志により「新栄の未来を考える会」が発足しました。周辺街区の再開発計画が進む中、アーケードの老朽化や空きテナントの増加、築70年以上の建物が密集などが新栄商店街の問題となっており、再開発も視野に今後のまちづくりの方向性を示すとのことです。この地区は戦後、裁判所跡地に商店街が形成されて以降、何度も再開発計画が浮上しては頓挫したいわくつきのエリアです。何度も頓挫した最大の理由は関係者が多く、意見が求まらないことにあります。現在でも商店街150区画(6,600m2)内には地権者だけでも70~80人おり、借地権者やテナントの入居者を含めると300人以上います。人数が多いと意見をまとめるのは難しいですからね。

ここでは1990年前後のバブル時代に新栄商店街で計画された幻の再開発計画「福井市新栄地区市街地再開発事業」について紹介します。

福井市新栄地区市街地再開発事業とは

概要

・場所:福井市新栄地区

・目的:老朽化した建物が密集しているため、防災上危険であることや、商業を中心とした活性化を図る。

・区域:新栄商店街を中心に元町、北の庄、駅前の各商店街の一部を含んだ約10,000m2

・計画:

構造 鉄筋コンクリート
階数 未定
用途 商業フロア、スポーツ施設、ホテル、レジャー施設、スカイレストラン

・事業費:未定

・経緯:

1986年3月 新栄地区再開発協議会 ブロック会議、アンケート調査、再開発事業の先進地視察などを実施
1988年5月 再開発協議会が福井市に陳情書を提出、内容は次のとおり。

①再開発事業の基本構想と基本計画の策定

②県や各関係機関との連絡組織の設置

③再開発準備組合への指導

④勉強会や役員会への出席

・年次計画:

1990年3月 再開発事業基本構想作成予定
1990年4月 再開発準備組合設立予定

・効果:

福井のシンボルとなるような「出会いの場」を創造することにより福井市の中心商業地の活性化都心ゾーンの活性化の拠点になる。

 

引用元:福井県内の主要プロジェクト 1992年 福井商工会議所

 

構想のその後

1990年前後に計画された福井市新栄地区市街地再開発事業は1995年頃に計画は頓挫しました。

 

 

現在の新栄商店街

現在の新栄商店街です。商店街の大部分はアクリル製のアーケードになっています。

 

グーグルマップに商店街の範囲を示しました。小規模店舗がこのエリアだけ密集しているのがわかります。これは幾度にわたる再開発計画の浮上と頓挫の繰り返しで建物の個別の建て替えが進まなかった結果です。未来的な街並みに変貌していく福井都心部においてレトロな雰囲気が残っているとして、マニアックなお店の出店もあり、そういう意味では評価されています。

商店街の西側には「新栄テラス」という広場があります。ここは元々コインパーキングだった場所を福井市と福井大学が2014・15年に社会実験的に広場に整備し、好評だったことから2016年より常設になった広場で、各種催しやビアガーデンなどが行われています。今では都心部の憩いの場になっているこの広場は2001年に発生した大規模火災の現場で、商店等全焼7棟、半焼1棟、部分焼2棟、ボヤ3棟の被害がありました。

 

今度こそ、再開発計画がうまくいくことを期待しています。

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