足羽山観光リフト遺構探索 2025.3

足羽山山頂付近にはかつて「足羽山観光リフト」という福井県内で最初に設置された索道がありました。私は18年前の2006年に探索を行っているため、その後どうなったか2025年3月に再度探索を行いました。ここではリフトの概要と2025年3月現在の様子を紹介します。

足羽山観光リフトとは

概要

福井市街地に位置する標高116メートルの足羽山。その山頂付近には現在、福井市営の「足羽山公園遊園」が整備されています。実はこの市営遊園が建設される以前、現・「山奥チョコレート日和」がある場所には、民間の遊園地が存在していました。

その遊園地へのアクセス手段として設けられたのが、「足羽山観光リフト」です。麓の乗降場には、鉄骨平屋建て(110㎡)のドライブイン兼事務所と、約80台分の駐車場が整備されていました。特に春の花見シーズンや秋の紅葉シーズンには、1日あたり最大1万5千人の来場を見込み、年間では25万人の乗客数を想定していたといいます。

また、リフトの下に広がる斜面には、水いどろり豊かな花壇やツツジ園が造成され、将来的には山頂付近に子ども向けのスキー場を設ける計画もありました。運営会社は、足羽山の年間利用者数約100万人のうち、25万人がリフトを利用すれば十分採算が取れると見込んでいたようです。

しかしながら、そうした期待とは裏腹に、この「足羽山観光リフト」は1979年頃に廃止されました。

〇リフトの概要

開業日:1971年(昭和46年)3月12日

延長:271m(高低差100m)

総工費:5500万円

座席数:65座(赤、青、黄)

乗車時間:3分

構造:座席式リフト

最大乗客数:往復900人/1時間

営業時間:9時~21時(開業時)

料金:大人 片道50円 往復80円、小人 片道30円 往復50円

※団体割引 20人に付 1人無料

運営:足羽開発会社(同社の吉田会長は福井テレビ社長)

索道設計:太平索道株式会社

 

リフトがあった場所です。 当時の乗り場の住所は福井市山奥町7-20-1

 

国土地理院サイトより、1975年の航空写真です。赤線で囲ったのが今回紹介するリフト、青線は遊園地(こどもの国・足羽苑)です。

 

リフトオープンの広告、1971年(昭和46年)3月12日付け福井新聞より引用

 

 

現在の様子

2025年3月下旬に現地調査を行いました。

乗降場

麓の乗り場があった場所です。

 

福井市西木田5丁目10番地、ハニー新鮮館 みのり店の向いに乗り場がありました。正面の平屋建ての建物はドライブイン兼事務所跡地です。その裏にリフト乗り場、隣の焼肉黄金屋は駐車場でした。

ちなみにドライブインに入っていた喫茶店の名は「喫茶リフトエイト」、駐車場には和泉屋というお店がありました。(1977年住宅地図より)

 

県道から山をよく見るとリフトのNo.2支柱が見えます。

 

支柱両端の車輪にワイヤーがまだ載っているのが見えます。

 

アパート裏にきました。丁字交差点付近から山を見ると落下防止ネットと椅子が見えます。

 

山際に100mほど東へ進むと鉄塔の巡回路があり、そこから入山します。

 

3分ほど登ると山腹にある鉄塔に至ります。

 

鉄塔の西側にはNo.4支柱がありました。

 

1970年9月竣工の文字が見えます。開業半年前に建設されたのですね。

 

支柱からは座席がついたままのワイヤーが垂れ下がっています。

 

ワイヤー沿いに上るとNo.5支柱が見えました。

 

座席には日よけが付いています。

 

No.5支柱付近から再度鉄塔の巡回路に戻ります。ここから巡回路はリフトに並行します。

 

巡回路からNo.6支柱が見えました。

 

鉄塔の巡回路です。鉄塔から上は道幅が広いのでもしかしたらリフトの保守道だった可能性があります。

 

木についたコブ?一瞬スズメバチの巣に見えてビビりました。自然史博物館の人に写真を見てもらったらコブでした。

 

続いて見えたのは支柱2本のNo.7支柱です。

 

上側です。

 

No.8支柱も2本ありました。おそらくこれが斜面にある一番上の支柱です。

 

No.8支柱あたりから再度、落下防止ネットが現れました。

 

 

 

終点の山奥チョコレート日和に着きました。

 

この辺りが山頂側の乗降場です。

 

このアスファルトは当時のままです。2006年の調査時には乗り位置を示す黄色い線があったので落ち葉を掃除すると出てくる可能性があります。

 

索道跡、草木が生い茂り、何も見えないです。リフトが現役時は良い展望を眺めながら空中散歩を楽しめたのでしょう。

 

斜面際に鉄の構造物がありました。

 

かつての遊園地跡です。写真左奥の区画線が引いてあるあたりには2005年頃まで4階建ての廃墟(足羽苑)があり、ネットでは心霊スポットとして噂されていました。

廃墟が取り壊されるまではリフト乗り場の構造体が残っていました。

 

現在は山奥チョコレート日和になっています。

 

山奥チョコレート日和の裏手の足羽山公園遊園駐車場にきました。

この駐車場は2023年にできたのですが、この場所にはかつてこどもの国ゴーカート場がありました。ゴーカート場に盛り土して駐車場が作られました。

 

山奥チョコレート日和の裏側です。

 

ゴーカート場のフェンスが残っています。

 

 

1975年の航空写真でいうとこの赤丸の場所になります。ゴーカート立体交差ありの8の字だったのですね。

 

足羽山観光リフトはネット上に情報があまりない索道なので、わからないことがいっぱいあります。

リフト現役当時の様子や山頂の遊園地にはどんな遊具があったかなど思い出話をコメントで残してくれると嬉しいです。

 

以上、足羽山観光リフト遺構探索 2025.3 でした。

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