福井県は2021年8月23日、2024年3月の北陸新幹線開業後に経営分離される並行在来線(現北陸本線)の運行計画案を発表しました。運行本数は現行の102本/日から126本/日程度に24本増便する計画です。朝夕には廃止される特急の変わりに快速列車が8本(4往復)走ります。ここでは運行計画案と運賃水準について紹介します。
運行計画案
報道された内容をまとめました。経営分離後は特急が廃止されるため、普通列車中心のダイヤとなります。
快速列車が復活
※2021年3月ダイヤ改正前時点での快速・特急停車駅表
北陸本線の快速は2021年春のダイヤ改正で唯一の快速が廃止されましたが、経営分離後に復活します。特急廃止の代案となるため、現在の特急停車駅程度の停車駅になる予定(現時点では停車駅未定)で、朝夕にそれぞれ2往復計4往復運航し、関西・中京へのアクセルを確保します。
現在の福井~敦賀間において普通列車は50分かかりますが、快速列車だと10分短い40分程度になります。
先行事例として富山県のあいの風とやま鉄道では経営分離後に快速列車の「あいの風ライナー」が金沢ー泊間で5本が運行を開始しました。この列車は廃止された特急の変わりとして区間内の速達性向上を目的としており、乗車には300円が必要な有料快速となっています。停車駅はかつての特急停車駅を奇襲しています。福井県内で計画されている快速が無料か有料かは現時点では決まっていません。
列車の増便は利用者にとってはよいことに思われますが、列車の短編成化とセットになっているため、万々歳というわけにはいきません。というのも、並行在来線を走行する旅客列車が増えると総列車数に占める貨物列車の割合が減るため、JR貨物から並行在来線会社に支払われる線路使用料が減ります。すでに開業後は毎年赤字で予想されている並行在来線会社にとって、貨物使用料は重要な収入源となっています。そのため、増便は現在4両編成で運行されている列車を2両編成×2本にするなどして行われます。ただでさえ、武生~芦原温泉間など混雑が激しく6両編成復活が切望されている区間も乗客の思いとは裏腹に2両編成化し、大幅に乗車快適度が下がる可能性があります。当局は乗車回数機会増により、混雑は分散するため、問題なしと回答するでしょうがそれはJRの定型文です。
運賃は引き上げ
1~5年目(激変緩和) | 6年目以降 | |
普通運賃(定期外) | 1.15倍 | 1.20倍 |
通勤定期 | 1.15倍 | 1.20倍 |
通学定期 | 1.05倍 | 1.05倍 |
上の表のとおり、経営分離後は現在よりも運賃が引き上げられます。引き上げ率は富山・石川並の水準とはなっていますが、普段の利用者からは痛手です。現在、福井~敦賀間の普通運賃は990円とギリギリ3桁ですが、これが2024年~2029年は1140円程度、2030年以降は1180円程度となります。福井~武生間の普通運賃は330円ですが、これが2024年~2029年は380円程度、2030年以降は400円程度となり、並行する福井鉄道の運賃とほぼ同額になります。武生在住者にとっては福井に行くのにどっちを使っても運賃は変わらなくなります。
以上、福井県並行在来線開業後の運行計画案と運賃水準でした。福井県民の鉄道になるのを主目的にしているのなら、JR・富山からの直通列車の運行や各種割引切符など、真に県民目線での運行を目指してほしいです。